ユニバーサルデザインを意識した学級経営
2015 / 09 / 13 ( Sun )
障害のあるこどもと障害のないこどもが、同じ場で共に学ぶことを目指すインクルーシブ教育。その実現のために、小学校、中学校の通常学級では、ユニバーサルデザインを意識した学級経営や授業づくりが求められています。全てのこどもにとって安心して楽しい学校生活を送ることができる学級経営をするためには、どのようなことを意識したら良いのでしょうか。
苦手のあるこどもが、実際に配慮してもらって助かった実例を挙げてみます。
「書き」が苦手・・・
授業中、先生の話しを聞きながらノートを取るのが大変!
◆授業中、ノートをとるための時間を作ってくれています。
読み書きが苦手な子にとって、先生の話しを聞きながらノートを取るのは至難の業です。毎時間、先生の話を聞くときは「聞く」ことに集中させて、後で「書く」時間を作ってくださる先生がいます。読み書きが苦手でない子にとっても、聞きながらノートを取っていると、理解が薄くなる場合もあります。クラス全体で、先生が話すときは「聞く」ことに集中させ、ノートをとるときは「書く」ことに集中させる、そうすることによって、クラス全体で授業に対する理解が深まっていくことでしょう。
「読み」が苦手・・・
テストやプリントを読むのに時間がかかり、読み間違えも多い。
◆通常のテスト、プリントの他に、大きな文字で行間が広いテスト、プリントを用意して、好きな方を選べるようにしてくれています。
読みが苦手なこどもにとって、大きな文字で行間が広く印刷されている方が見やすいことが多いです。文字が大きなプリント、普通のプリントの2種類を用意して、どちらを使うか、こどもが選べるようしてくださっている先生がいます。
人前で話すのが苦手・・・
誰かに話しかけるだけでも緊張してしまう。発表がある日は学校を休みたい!
◆本人の希望を聞きながら、小人数から慣らしていってくれています。
人から注目を集めることや失敗することに強い不安を感じるこどもがいます。単なるあがり症と決めつけないでほしいです。社交不安障害などの精神疾患の可能性もあり、無理に人前に立たせることでトラウマになってしまう場合もあります。
発表が苦手な子のために、最初は少人数グループ内での発表や、友達と一緒に発表させる、などの考慮をしてくださっている先生がいます。
どういう発表形態ならばチャレンジできるか、本人の希望を聞き取りながら、少しづつできる範囲で慣らしていくようにしてくださっているおかげで、子どもたちの可能性が広がっていきます。
音楽のリコーダーや歌が苦手・・・人前で何かするのも苦手だし・・・
音楽のリコーダーや歌のテストでみんなの前で一人で歌ったりリコーダーを吹いたりするのは、とても苦痛!
◆テストの方法を工夫してくれています。
発達障がいのこどもは、リコーダーや歌が苦手な子が多く、みんなの前で一人で苦手なことをやらなければならない、リコーダーや歌のテストは苦痛を伴います。
いきなりみんなの前ではできない子のために、最初は先生と1対1でテストをしてくださった先生がいます。先生と個別のテストで対応してもらったおかげで、徐々にみんなの前でできるようになっていった例もあります。また、やりたい人からテストをして、終わった人は先に音楽室から教室に帰っていいという方法にしてくださった先生もいます。そのおかげで、苦手な子たちは最後の方に、少ないギャラリーの中でテストをすればよくなり、緊張が高まらずに済んで助かっています。
テストの方法を工夫してくださっているおかげで、「全くできない」と思い込んでいたこどもたちは、「テストを受けられた」という達成感が得られ、自信につながっていきます。


こどもたちはとても敏感で繊細です。個別対応でサポートしてもらうのは、友達から「なんでお前だけ」と言われるのがイヤで拒絶してしまうこともあります。サポートするときは、クラス全体で、全員の子に選択肢を与えてもらえると、サポートを受けやすくなります。
こどもによって苦しんでいることは様々で、サポート方法もその子に合ったサポート方法はそれぞれ違います。どうしていったら良いか、すぐには答えはでませんし、これが正解という解答もありません。本人の気持ちを一番尊重しつつ、学校の先生方、支援の方々、保護者、みんなでそのこどもに合ったサポート方法を考えていけたら良いですね。


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発達性ディスレクシアの集い
2015 / 09 / 07 ( Mon )
※再生ボタンを押すと、音声読み上げをします。

8/23(日)に、バオバブの樹主催の第1回発達性ディスレクシアの集いを開催しました。

本集いは、中学生、高校生に成長して自分の特性を理解して表現できるようになった発達性ディスレクシア当事者たちと、発達性ディスレクシアで苦労しているこどもたち(小学生)の交流の場を作ることで、ディスレクシアのこどもたちに文字で苦労しているのは自分たちだけではないと共感を持ってもらうことを目的としています。

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◆◆◆はじまりのゲーム◆◆◆
最初にウォーミングアップに円めくりのゲームをしました。
2チームに分かれて、円を自分のチームの色にひっくり返します。
どっちが勝ったかな?

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◆◆◆読み書きの苦手なところ、大変なところ、好きなところなど話そう!◆◆◆
こどもたちは普段どんなことに困っているのでしょうか。言語聴覚士の先生や中学生、高校生に成長したお兄さん、お姉さんと一緒に、こどもたちにいろいろ意見を出してもらいました。
  • 漢字を書いて覚える・・・って意味がわからない(書いても覚えられない)
  • 先生が話していると書くことを忘れちゃう
  • どこを読んでいるかわからなくなる
  • できない自分を認めたくないから頑張るけど、できない
  • ドリルをノートにうつしてやれっていうのがヤダ
こどもたちは学校生活の中で、様々な困難を抱えています。

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こどもたちが意見を出している間、こどもたちのお母さん、お父さんは、親のグループで、子育ての大変さや大きくなったお兄さん、お姉さんに質問したいことを付箋に書き出しました。
  • 今よりもうちょっと頑張ればできるのではないか?と思ってしまう
  • あせってはいけないと思えば思うほどあせってしまう
  • 新学期に担任はどんな先生にあたるのかドキドキしてしまう
  • どうしたらできるのかとぐるぐる考えてしまう
  • 宿題をどこまでやらせたらいいか悩む。学校の先生は「出来るとこまででいいよ」と言うが、それはどこまでやらせればいいのか余計悩む
親だって、悩み、苦しんでいるのです。悩みながら、どうしていったら良いのか模索しています。

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集いを見学に来てくれた小学校や中学校の先生たちも、質問したいことを付箋に書き出しました。
  • 「これは助かった」と思うこと、「これはいやだった」と思うことを教えてください
  • 友達に対して自分の特性を先生にどう説明してほしかったですか
  • どのようなことに難しさを感じているのかをもっと知りたいのですが、どのように聞いたら良いですか
  • 小、中学校時代に先生から言われて嫌だった言葉、嬉しかった言葉を教えてください
  • 漢字学習について 他の子と同じ量、同じ教え方だと、きびしい。どうしてほしいのかな
先生たちも、どのようにサポートしていったら良いのかいろいろ考えて工夫しようとしてくれています。

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◆◆◆音楽であそぼう◆◆◆

お昼休みを挟んで午後は「音楽であそぼう!」です。音楽療法士の松田先生と一緒に、最初にいろいろな太鼓をたたきました。
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次はハンドベルの演奏です。発達性ディスレクシアの子は譜面を読むことに苦労することが多く、音楽は好きだけれど、譜面を読まなければならないのは苦痛で、学校の音楽の授業が苦痛なことが多いのです。
そんな譜面を読むことが苦手な子どもたちがみんなでハンドベルの合奏を楽しめるよう、バオバブの樹では、譜面も工夫しています。
下の写真にある楽譜は「フィギャーノート(Figurenotes)」といって、音程を色で区別し、音の長さを楕円の長さや線の長さで表しています。
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音楽を感じながら、コラージュの森も作りました。
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午前中、心の中のことをことばで表現したこどもたちは、午後は、文字でもことばでもない音楽とアートで自分を表現しました。

◆◆◆質問コーナー!◆◆◆

最後にこどもたちはおやつタイム。その間に親、先生たちはお兄さん、お姉さんへの質問コーナーです。
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音読が遅いとイライラして怒っちゃう。怒っても何も良くならなくてさらに落ち込む。
(母からの悩み)
落ち込まずにどんな方法でやったら学べるのか一緒に考えてほしい。親とは一緒に考えられない反抗期の時期もあるので、その時は大目にみてあげてほしい。

沖村先生からの補足:
頭では大体理解していることが多いです。音声につなげることでわからなくなる子も多いので、黙読で読ませてみて内容が理解できるか、または読み上げてあげたら理解できるか、その子にあった方法を見つけてあげてください。音読だけで判断しないであげてほしいです。
「今日学校どうだった?」って聞いても「うーん、・・・覚えてない。」。何も教えてくれないので、学校での出来事がわかりません。
(母からの悩み)
勉強が大変で、楽しかったことは何も覚えていない。どれだけ読んで書くのが大変か理解してほしい。
タブレットがやっぱり良い?
(先生からの質問)
キーボード入力のほうが速く、読める字で記録できる。(自分で書いた文字だと、あとで読めないことが多い。)

授業にパソコンを持ち込んだことがある。でもゲーム等に気が散ってしまうので、今はやめて手書きで頑張っている。

タブレットはよい。すごく武器になる。

授業に一人だけタブレットを持ち込むと、小さい子だと周りからなんでなんでって聞かれると思うのでそれもつらいと思う。
見やすい文字が知りたいです。
(先生からの質問)
基本的に黒板は無理。人が書いた文字は人によって形が違うので、見やすくはない。前を見て黒板を見る。その後ノートに書くのに下を向く。その間に忘れている。

テストは行間があいている方が読みやすい。フォントは統一してほしい。重要なところは大きくするなどしてほしい。
理解してくれる人はたくさんいる?理解してくれない人には自分から関わりたくない?
(先生からの質問)
理解してくれる人はいるが、理解の方向が違うことがある。書くの苦手なんでしょ。だから書かなくていいよ。と言われるが勉強したくないわけじゃない。方法を工夫して勉強したい。
先生や周りの人にサポートされて良かったところは?
(先生からの質問)
漢字のフリガナとかはよかった。でも結局周りの友達になんでお前だけ、と言われる。別教室にいたときもあるが、どこ行っていたんだよ、と言われる。高校生くらいになると理解力がでてくるが、小学生、中学生では難しい。どのサポートが良いかではなく、サポートなしでもその子にとって居心地の良い教室作りをしてほしい。

国語の漢字テスト以外ではテスト用紙にフリガナがあったって良いと思う。社会や理科でも漢字指定の問題があって、漢字で書かないと×になる。漢字指定でなくても、社会の人物名をひらがなで書いたら三角にされたことがある。漢字テスト以外では、漢字で書いてもひらがなで書いても同じ扱いにしてほしい。


今回の集いで、こどもたちがどんなことに苦しんでいるのか、まわりはどうしていったら良いのか、こどもたち、親たち、先生たちの相互理解を深められたと思います。
こどもによって、苦しんでいることは様々で、サポート方法もその子にあったサポート方法はそれぞれ違います。どうしていったら良いか、すぐには答えはでませんし、これが正解という解答もありません。でも、こどもたちは理解してもらえるだけで、少し楽になります。こどもたちは自分のことをわかってほしい、学校の先生や親はこどもたちを理解したい、という気持ちをお互い強く持っています。少しづつでも理解していって、こどもたちが楽しい学校生活を送れるように、この「ディスレクシアの集い」を継続していきたいです。


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用語説明
2015 / 09 / 07 ( Mon )


◆発達性ディスレクシア(Developmental Dyslexia)

発達性読み書き障害
LD(学習障害)の中核をなす障害です。知的な遅れはないのにもかかわらず、文字の読み書きに苦手があります。
全く読めない、書けないわけではありませんが、文字を読み書きするスピードが著しく遅く、間違えも多く、すらすら読んだり書いたりすることができません。
脳の認知スタイルの違いにより本人が努力しても文字の習得に困難がありますが、周囲には努力していないと思われてしまう、理解されにくい障害です。

詳しくはこちらこちらを参照してください。(外部のサイトになります)



◆言語聴覚士(ST)
Speech-Language-Hearing Therapist (ST)と呼ばれ、リハビリテーション専門職に分類される国家資格です。
主に、医療、福祉、教育の現場にいて、ことばのことで心配を抱えておられるお方のお役に立つのが仕事です。
守備範囲は、ことば、コミュニケーション、摂食(飲むこと、食べること)に関することなど、口周り関係のことを幅広くカバーしています。



◆フィギャーノート(Figurenotes)
フィギャーノート(Figurenotes)はフィンランドで開発された五線譜の「形象音符表記技法」です。
これまで五線譜を読むのが大変だった人でも音符を、色と形で表しているので、簡単に演奏できます。

詳しくはこちらを参照してください。(外部のサイトになります)









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